京都に生まれ,小学生のときに蛍光鉱物に出会う.南カリフォルニアにいた 2014 年の春,ふとした切っ掛けでニュージャージー州フランクリン鉱山の石を手に入れる.見向きもされそうにない地味な石ころが,紫外線ランプで途端に魅力的な存在になるから面白い.小さな鉱物に目を凝らす.暗闇から静かに浮かびあがる蛍光はときに呼吸すら忘れさせる.

蛍光鉱物の多くは不透明で,石のほんの表面を僕たちは見ているに過ぎない.ひょっとすると,ハンマーで割ればもっと幻想的な表面が顔を出すかも知れない.でも割れば石は小さく貧弱になる.そんなジレンマのなかで採集・処理されたのが目の前の石なのだ.米国の熱心なコレクター達は,鉱山の多くが閉鎖され,ズリという宝の山が駐車場やビルになるのを嘆きながら,今も一心にハンマーを振りつづけている.そうした人たちの一部はグリーンランドに足を運ぶことすら厭わない.A. Giazotto の言葉ではないが,鉱物の世界は自然と人間の二人三脚だ.

僕は鉱物の専門家でも高尚な愛好家でもない.「綺麗だな」とか「面白いな」というレベルで楽しんでいたものを,自分の専門知識でいくらか味付けして出来上がったのが,このサイトだ.人気や希少価値,システマティック・コレクションに僕はおよそ無頓着で,単純に美しいと感じるものを求めている.複数の鉱物が集まり,全体として配色の良いキャビネットサイズの石を好む.重さ五百グラム(ペットボトル一本分),できれば一キロが購入時の目安だ(*1).平均的な米国人コレクターの嗜好と言い換えてもよく,勢いフランクリン鉱山産やグリーンランド産にコレクションが偏ってゆく.前者は米国らしく明るく鮮烈で,後者は氷の国のオーロラのようだ.

2017 年に THE FLUORESCENT MINERAL SOCIETY の唯一の日本人会員となるも,同会のイベントになかなか参加できず脱会した.ほかの趣味に国立公園巡り,スケッチ,バラ栽培がある.2019 年現在,米国ではグランドサークル,イエローストーン,デスバレー,ヨセミテ,セコイア国立公園をレンタカーで訪れている.好きな小説家は荻原浩と浅田次郎,J. ギルストラップ,L. M. ビジョルド.


 



*1. Esperite のように比重の重い石もあって,必ずしも「サイズ=重さ」ではないが,サイズを推し量る目安くらいにはなる.