蛍光鉱物の色を理解する上で色度図が役立つことを教えてくれた.著者はあくまでコレクターなので量子力学について誤解や混乱も多い.読み物として薦めたい.
Modern Luminescence Spectroscopy of Minerals and
Materials(M. Gaft ほか著)
LUMINESCENT SPECTRA OF MINERALS(B. S. GOROBETS ほか著)
LUMINESCENT MATERIALS(G. Blasse ほか著)
分光スペクトルの整理が目的だった M. GAFT の本に比べ,こちらは蛍光のメカニズムにも注目している.
*2. 互いに補色の関係にある二色を混ぜると白になる.このため色度図では,補色の関係にある二色はかならず白をまたいで対極の位置を占める.
*3. ただし一般には,一種類のアクチベータが単色を示すとは限らない.二重蛍光はその典型例だ.鉱物中のアクチベータが遷移金属元素の場合,結晶構造の対称性が低く配位子場分裂が歪だったり,様々なタイプの格子欠陥をアクチベータが占有できるときも混合色になり得るだろう.アクチベータが希土類元素の場合,内殻電子が発光に寄与するため相対論効果も混合色に寄与するかもしれない.
*4. 視覚の問題は実はとても難しい.たとえば反射と発光(蛍光・燐光)のメカニズムは物理的に明確に区別されるが,発光している物体を人が「光っている(まぶしい)」と感じるかどうかは目と脳の働きにも関係し,必ずしも一対一の対応関係がない.突飛な喩えだが,お金(光)の出どころが善人か悪人か(発光物体か反射物体か)を問わず,僕たちが受けとるお金に区別はなく,善悪の区別は僕たちの状況判断にもよるということだ.真夏の信号機のように発光しているのに光っていると感じないものもあれば,夜道の反射板のように反射しているだけでも光っているように感じるものもある.特に視界中のコントラストが極端に高いとき,目と脳が設定するダイナミックレンジをオーバーしてしまい,光っていると感じやすいようだ.暗やみで蛍光鉱物をみる状況はまさにその典型だ.